歯科麻酔の効いている時間は?麻酔中の注意点とは?

歯科治療をする際、痛みを抑えて治療を行いやすくするため、麻酔を使用する機会も多くあります。

 

虫歯治療で麻酔を経験したことがある人も多くいるのではないでしょうか。歯科麻酔の効いている時間は、患者様により個人差があります。今回は、歯科麻酔が効いている時間と注意点を解説していきます。

 

 

 

 

歯科麻酔が効いている平均的な時間は?

 

歯医者さんで麻酔をしてもらったら、口の周りが痺れてきて、治療が終わっても感覚がないのでうまく口を動かすことができなくて困ってしまったというご経験のある方もいらっしゃると思います。

歯科治療の際には、予定している治療内容が痛みを伴うものであれば、局所麻酔を使用いたします。歯科医師が判断いたしますが、多くの処置で必要となります。

例えば、

神経のある歯での虫歯治療や詰め物の装着

歯の神経を取る治療

歯の根の治療(根管治療)

歯茎に隠れた歯周ポケットの中の歯石の除去

歯を抜くとき(抜歯)

などと多岐にわたります。

 

 

 

治療中で麻酔の効果がきれてきて痛みを感じてしまったというご経験や、逆に治療後も麻酔の効果がきれなくて不安を感じたりされたというご経験をされた方も多くいらっしゃると思います。

 

 

 

それでは、麻酔の効いている時間の長さは何によって左右されるのでしょうか?

 

 

基本的には、麻酔の効いている時間は個人差(個歯差)が大きいと思われます。

同じ患者様でも歯によって麻酔の効きやすい歯と効きにくい歯があります。

一般的に、

下顎:上顎より効きにくい

奥歯:前歯より効きにくい

 

効きにくい歯は麻酔が効いてもすぐにきれてしまいます。

ただし、歯の周囲の口腔粘膜や唇には効いていますので痺れの感覚は長時間残ります。

 

 

 

 

また、麻酔の手法によっても効いている範囲と時間が異なります。

施術時は以下の手法より選択して十分に麻酔効果を得られるように配慮しております。

 

 

(1)表面麻酔

綿球にゼリー状の麻酔薬を付着させて、注射予定の粘膜に塗布します。

範囲:粘膜の表面のみ

目的:以降の麻酔時の注射針の刺さる痛みを和らげる。

効果:☆

奏効時間:5分程度

※単独では全く麻酔効果はございませんので浸潤麻酔を必ず併用します。

 

 

(2)浸潤麻酔

もっとも使用頻度の高い方法です。歯肉に麻酔液を注入して、歯の神経に到達させることによって効果が得られます。

範囲:歯の周りの歯肉→歯の内部の神経

目的:歯肉及び歯の感覚を麻痺させる

効果:☆☆☆

奏功時間:2時間程度

※通常、まずは表面麻酔後に浸潤麻酔を行います。多くの場合、十分な効果が得られます。十分な効果が得られない場合は以下の手法を併用します。

 

 

 

(3)伝達麻酔

顎の骨の神経管周囲に麻酔液を注入し、歯の神経の大元の太い神経から感覚をブロックします。

範囲:片側の唇、歯の神経、舌など広範囲

目的:浸潤麻酔では効かない場合に使用

効果:☆~☆☆☆☆☆(効果が不安定である)

奏功時間:2~6時間程度

※うまくいけば、広範囲に大きな効果が得られ、長時間持続するので、多くの歯を一度に治療したり、長時間の治療に適しています。ただし顎の骨の小孔(神経管の入口)の位置がわかりづらいため、効果が十分に得られない場合もあります。大元の太い神経を傷つけてしまうリスクもありますので、当院では使用することは少ない方法です。

 

 

(4)歯根膜麻酔

歯と歯茎の間の薄い膜(歯根膜)に麻酔液を注入して、歯の神経に到達させます。

範囲:歯の周りの歯肉→歯の内部の神経

目的:浸潤麻酔では効かない場合に使用

効果:☆☆☆☆☆

奏功時間:2時間程度

※浸潤麻酔では十分に効果が得られない場合に使用します。歯根膜は非常に薄く麻酔液を注入するのに強い圧力が必要ですので全自動の注射器で注入速度と圧力を制御します。麻酔がきれた後は数日間歯茎の違和感や痛みが発生する可能性がございます。ブラッシングは軽めに当ててください。

 

 

(5)髄腔内麻酔

歯の神経(歯髄)に直接麻酔液を注入します。

範囲:歯の神経

目的:虫歯などにより神経がすでに露出している場合に限る

効果:☆☆☆☆☆(歯の神経に限る)

奏功時間:2時間程度

※歯の神経を取る処置に限り、有効な方法ですが、神経に直接注射針を刺すので注射時の痛みがあります。事前に浸潤麻酔や歯根膜麻酔を済ませたうえで、効果が十分でない場合にのみ使用を検討します。

 

 

 

このように、麻酔の平均持続時間は方法によっても異なります。使用頻度の高い方法はおおよそ2時間程度ですので、治療時間が30分であれば、治療後90分程度で効果がきれることになります。

 

 

 

 

 

歯科麻酔を受けた後の注意点

 

 

 

歯科治療が終わっても、麻酔の効果は続いています。ほとんどの場合で前述のように浸潤麻酔という周囲の歯茎から麻酔を染み込ませる方法を使います。

麻酔液が到達する範囲は治療する歯だけではなく、その周囲の歯茎から唇や頬、舌や鼻、顔面までに至ることもあります。

 

麻酔薬自体は時間の経過とともに代謝され、体内に蓄積することはございませんが、痺れの効果が残っている間は注意が必要です。

 

 

 

 

局所麻酔をされた患者様へ

・治療後2時間程度は周囲のしびれが残っています。

・お飲み物の際には、口元よりこぼれやすくなりますのでご注意ください。

・熱いものを召し上がる際は気づかずやけどされてしまいますので痺れている間は避けてください。

・痺れている箇所で食事をしてしまいますと、気づかず唇、頬や舌を噛んでしまい傷ついてしまいますので避けてください。(口内炎になってしまう場合もございます)

・痺れのある箇所を手指で触れないようにしてください。(注射針の刺さった傷に細菌が侵入してしまいます)

・麻酔を受けた箇所は注射針により傷ができていますので、歯磨きの際は数日間歯茎に強く触れないようご注意ください。

・麻酔の方法によっては、噛んだ時の痛みや歯の浮いたような違和感が数日間残りますので、そのようなときはその歯が食事の際に当たらないよう避けてください。

・ご不明点や気になることがございましたらご連絡ください。

 

 

 

 

 

加賀美歯科が歯科麻酔で気をつけていること

 

 

 

歯科の麻酔は注射による局所麻酔ですが、患者様は点滴や予防接種などの注射よりも恐怖心を強く感じているように思えます。

自分なりに考察した理由として、

・いつ注射されるのかがわからないので急に針が刺さってびっくりする

・麻酔薬を注入している時間が長いのでいつ終わるかがわからない

・麻酔が終わってもまだ治療が残っているので恐怖がある

 

 

表面麻酔薬を塗るとき、注射針を刺す瞬間、麻酔薬を注入開始する瞬間、麻酔薬を注入している間にこまめに声掛けをさせていただき、できるだけ不安や恐怖をやわらげて差し上げられるよう心掛けております。

もちろん、麻酔は治療を確実に、正確に行うための準備として必要な処置であるので、治療がメインであることは常に忘れずに、麻酔の十分な効果が得られるように配慮して麻酔を行っております。